名前の由来
まずは苗代(なわしろ)
ナワシロイチゴの名前の由来を話していて、「苗代を作る頃に」と言ったら、「苗代って何ですか?」と聞かれ、「苗代」を見る機会がなくなっていることに気がついた。
苗代とは、田植えの前に、稲籾(もみ)を蒔いて苗を作る田んぼのこと。
このあたりではゴールデンウィークころに田植えが始まるから、苗は4月中には準備をしなくてはならない。元々、稲は東南アジアの植物だから寒さに弱い。だから、温室の中で温度管理をして育てる。
私が子どもの頃は苗代で苗を育てた。もちろん屋外。だから、苗代を作るのも、霜の心配がなくなる季節。そして、田植えは梅雨になってからだった。
名前の由来
時々、「苗代を作る頃に実がなるからナワシロイチゴという」と書かれているが、実のなる季節は今頃、つまり6月終わりから7月。今、苗代を作っていたのでは、田植えがいつできるやら、困ったことになる。
「苗代を作る頃に花が咲くから」というのが正解だと思っている。 |
花の仕組み
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写真1
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ナワシロイチゴの花はちょっと変わった咲き方をする。ガクが開いて花が咲いたのに、花弁が閉じている。しかし、よく見ると花弁の先がちょっとだけ開き、しべの先が出ている。
出ているのは メシベで、 オシベは見えていない。 つまり、今花は「雌花」になっている。(写真1)
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写真1
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では、オシベはないのかというと、そうではない。ちょっと失礼して、咲いている花の花弁を2枚ほど外してみた。中央に伸びているメシベ(ピンク色をしている)の周りを、まだ未成熟なオシベ(白い)が取り囲んでいる。(写真2)
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写真3
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ナワシロイチゴの花は雌花時期が過ぎると花弁を落とす。
メシベは役目を終え、オシベが伸びて、花粉を出している。(写真3)
咲き終わったように見える花は雄花の状態。
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写真4
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本当に花が終わると、実が熟すまで、ガクが閉じられる。未成熟な状態で、鳥や虫につつかれたくないのだ。(写真右側の閉じたもの)
実は熟すと赤くなり、ジューシーな果肉をつけて鳥を待つ。しかし、この花の受粉率はかなり低いらしく、一つの花に実がひとつだけとういうのもざらにある。
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写真5
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赤くなるのは鳥に見つけてほしいから。実をつける台も、ガクの内側も赤くして鳥にアピール。(ガクの中心にある赤いところは実ではなく、実をつける土台。)
哺乳類も(私たちも)もちろん、食べる。
中の硬い種は消化されずに、糞と一緒に落とされる。
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鳥たちにも魅力的な実は、昆虫にとっても魅力的なようだ。実の間に小さな虫がいた。
ナワシロイチゴにとっては、種を運ばず実だけを食べる昆虫は迷惑な存在。
しかし、実をねらってやってくる昆虫を待つクモもいて、それぞれが生きていることを実感。
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少しいただいてジャムを作った。真っ赤なジャムができた。
大丈夫、鳥たちの分はちゃんと残してきた。というと聞こえがいいが、本音は、取りたくても取れないのがたくさん残った。枝にはとげがあるから、むやみやたらと手を突っ込めない。
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葉は3枚または5枚で1セット(写真は3枚1セット)の複葉
トゲは枝の伸びる方向と逆に生える。丈夫な枝ではなく、細い枝を伸ばし、他のものに寄りかかって伸びる。
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花は花びらでオシベを押さえ、メシベだけを出すことで、自分自身の花粉で受粉することを防いでいる。
花は元々、遺伝子交換を目的にしている。違う花の花粉、違う個体の花粉を受け取りたい。遺伝子の違う個体があることが、生き残りに必須なのだ。
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