身近な薬草、ドクダミ

 この草ほど多くの人にしつっこい雑草として嫌われたり、多くの人に強力な薬草として親しまれ感謝されているものは他に例を見ない。強烈な臭気と生命力をもつ野草、その名はドクダミである。いやな名である。語源は「毒溜め」から転化したもので、毒をためらわせる、毒を抑制する意味を持つとか。

たくましい日陰の植物

 

 ドクダミは日陰に自生する多年草である。茎は高さが30〜60センチ、葉はハート形で茎とともにやわらかい。6〜7月ごろ2〜3センチの花穂に多数の花をつける。花穂の下に四枚の白い花びらのように見える総苞片がある。
 群生して生育するこの草の臭気は、あみゅーず68号で紹介した「ヘクソカズラ」の比ではない。この草、むしり取っても、ちぎれ残った根から、たちまち芽を出して生長する。 
 広島市が原爆で灰燼に帰したとき、最初に出現した野草が、このドクダミだったそうだ。
 陰湿な場所を好み、強烈な臭気としつっこさと生命力、それに悪名、これが嫌われる要素である。
この臭気、ドクダミにとっては虫害を防ぐ手段であろうと思ったが、この臭い葉をムシャムシャ喰らう茶色の毛虫がいたのには驚いた。蓼食う虫も好き好き、世の中うまくできている。この毛虫、ドクダミの薬効のおかげか、病気もせずに?太っていた。

この花は観賞に値するか

 

このドクダミ、人間の五感を通して観賞するには、とうてい耐えられないが、視覚だけなら結構、楽しめる。特に、夕暮れの中の白い苞葉の集団は、暗い照明の中の白衣のバレリーナのような品のある美しさである。

 ある喫茶店でドクダミの一輪挿しを見た。臭気も感ぜず、可愛いのである。店主の感性に感服した。
 ドクダミの仲間の半夏生(ハンゲショウ)も臭いがあるが、生け花に利用される。人間の鼻は順応が早いから、触れなければ少量の臭いは慣れるのかも知れない。この店主、人使いも上手かも知れないと思った。

頑固な便秘に強い薬効

 私が入院したとき便秘に悩んだ。医師の処方した薬では効果はさっぱり、同室患者も私同様、そろって便秘。病室には特有の共通性があって苦笑いした。一日二日なら苦笑で済んだが、五日も続くと不安である。そこで、わが家からドクダミを煎じてポットに入れて持ってきてもらった(私は血圧が高いので、毎日飲んでいる)。その日のうちにコップ1杯で全員効果が出た。以後一日おきにドクダミを煎じて病院に持参、ドクダミの凄さを体験した。ドクダミが縁で今でも友好が続いている臭い仲となった。

採集法と利用法

 ドクダミは、日陰なら家の裏など、どこでも生育しているが、犬様の小便無用のところを選んで採る。採取は軍手をはめて引き抜くと根元までとれるが、土が付く。洗うのが大変なので、私は地上部をハサミで切り取っている。採取したら、すぐに水にさらしながらよく洗う。 
 洗ったドクダミは、根元をそろえて束ねて結ぶ。そして風通しのよい軒下に吊して乾かす。日光に当てると臭みが分解され、なくなる。簡単に干すには、網戸を洗って、その上に干す。
 天気がよければ数日で、茎がポキンと折れるほど乾燥する。天気が悪いと日数がかかるので、天気予報をよく見て、晴天が続く日を選んで採取するとよい。
 乾燥したドクダミは、10cmぐらいに茎をハサミで切り、フリーザーパックに入れ、空気を抜いて保存する。よく乾燥させれば長期保存に耐える。利用するときは、乾燥葉を一つまみ(5〜10g)を約1リットルの水に入れ、中火で煎じ、水が半分になるまで煮詰める(適当でよい)。ドクダミには鉄分と化合するタンニンがあるので、煎じる鍋はホーロー引きか土鍋がよい。
 冷えたら茶漉しで漉して、ペットボトルに入れ、冷蔵庫で保管する(2〜3日分まで)。利用するときは、電子レンジで温めて飲む。飲む量は自分の経験で決める。

《自家栽培》

ドクダミを栽培するときは、根を採ってきて日陰に埋める。鉢植えにしてもよい。一ケ月で芽を出し生育する。白家栽培の利点は、いざというときに生薬を利用することができる。生葉は抗菌作用があり、水虫やタムシなど外用に利用できる。《あみゅーず89号(2001年5月)より転載》