2000年4月発行

古利根川あれこれ

松本順吉

 古利根川は春日部市民とともに、長い年月を過ごしてきました。しかし、その自然は、市民の人口増と生活の変化とともに人為の影響を色濃く受けるようになってきました。特にここ数年の自然変遷のの遠さは、古利根の生物に大きな変化をもたらしています。
 私たちは、古利根側の眼前のフィールドからいろいろなことを経験してきました。身近な自然は、土手の変化や、土手草の刈り方などに応じて、刻々と変わりつつあります。そこで、私たち埼玉県生態系保護協会の活動も、少しずつ変化しました。
 昨年度、私たちスタッフは、微力ですが、観察会の経験を生かして、環境行政や一部の教育活動に参加するようになりました。
 次に主なことを報告します。

(1) 川久保公園などを自然公園に春日部市環境基本計画策定市民懇話会等に私たちの仲間が複数参加しました。そして、川久保公園と谷原のグランド近くの湿地を自然公園にするよう、働きかけました。

(2) 川原の葦を残す治水工事に川久保公園に接する土手と川原に、治水工事が行われることになりました。工事方法は、葦原を全部取り去り、一部植え戻すとのことでした。
 私たちは、良質な自然はそのまま残すよう工事担当事務所に、書面で要望しました。また、土屋知事に手紙で、自然の生態系を配慮するよう訴えました。
 結果として、工事工法が見直され、葦原は中州のようにして残すことができました。

(3) 土手の植物の変化昨年度は、市民の要望とかで、土手の草刈りが数回行われました。その結果、猛威を振るったイヌムギも結実せず、姿を消しつつあります。しかし、わずかに残っていたススキもなくなりました。今年は、どんな野草が勢力を伸ばすのか、また、川久保公園近くの、治水工事のあとには、どんな野草が生えるのか、生態系としては興味ある問題です。

(4) キタミソウ見つかる有名なキタミソウが、今年2ヵ所で見つかりました。かすかべ霊園と緑中学校近くです。
 個体数が少ないので、見守っていきたいと思います。

おわりに
この度、支部長の新津さんから、私に支部長を引き受けてほしいと、依頼がありました。新津さんは、春日部支部の発足以来7年間も献身的に活躍し、支部をまとめて、運営してきました。そして、生態系春日部支部の存在感を市民に示し、地域の環境づくりに貢献してまいりました。
 それにひきかえ私は、ボケ防止を目的に参加している高齢者なので、一応2年間、支部長の役を引き受けました。とりあえず、古利根川観察会を楽しみながら、スタッフの充実をはかりたいと考えております。
ご指導、ご獺蓬のほどお願いいたします。

支部長を松本さんにバトンタッチします

新津八重子


今年も花の季節が巡ってきました。支部設立7度目の春です。
 自然保護のボランティアに参加するようになって10年の時が過ぎました。でも、まわりの状況はというと、あいもかわらず、身近から緑は減少の一途をたどっています。しかし、企業などの環境に対する姿勢は確実に変わってきているように思えます。
 いま市民にできることとしては、あきらめず、根気強く、自然を残し育てようという声をあげつづることだと思います。
 今年から、松本さんが、支部長を引きうけてくれることになりました。支部長を受けて7年、自然が好きという気持ちは少しも変わることはありませんが、活動や思考回路のほうがちょっとマンネリ気味ですので、今年からは松本さんをサポートする側に回らせてもらい、また新たな気持ちでボランティア活動に参加していきたいと思っています。 
 今後ともよろしくお願いいたします。

古利根川の自然ふれあい観察会

土田貴子


 毎月第三日曜日に行われている”古利根川の自然ふれあい観察会”の場所までは、我が家からわずか自転車で5分程の距離だ。幼いころのほとんど毎日ともいえる川遊びの楽しかった思い出が鮮烈に残っている私にとって、川の中で遊べない、石のごろごろした河原がない、水が濁っている、こどもたちの遊ぶ姿がほとんどない古利根川は大きなどぶのような印象だった。たまたま通りかかった時にしか見ない川、いや通りかかっても見ることさえしない川だった。海もない、山もない、田畑は急激に宅地に変わり道路の整備が進んでいる、そして川もない、それが私と私の家族の暮らすまちとなった(8年前)。
 ところが…である。”観察会”に何度となく参加したことによって、自然なんて皆無のように思っていた古利根川やその周辺にさまざまな生き物が生息していることに気づかせられた。恵みを与え続けてくれる水の偉大さ故であろう。土手にはいろいろな草花や木が季節の移り変わりとともに咲き繁り実る。その多様な植物に昆虫や鳥などが集まってくる。昆虫を捕食する島もやって来る。カタツムリ、カエル、カナヘビもいた。川には藻類、植物の種、魚などを餌にしている鳥がたくさんいる。ダイサギ、アオサギ、カワウのような大形の鳥たちには「がんばって」と声をかけたくなる。カワセミのとまり木、飛しょうコースも見当がついてきた。特に冬は北の国からはるぱる渡ってきたカモメやカモたちに会える。
 知らなかった草花や木、鳥の名前や生態を毎回根気よくそれとなく教えてくれる心やさしい人達に囲まれ、つかのまの気持ちの良い時が流れる。今や、古利根川はなくてはならない私の大切な場所となった。自分が気づこうとすれば、狭い庭にも道路のわきにも生きものの暮らす小さな自然が存在する。そうした意識が”観察会”を通して芽生えてきたことによって、自分のまちのいたる所で自分の見ようとする目、感じようとする気もちが働きだした。毎日がとても楽しい。
 ”古利根川の自然ふれあい観察会”は4月から6年目を迎える。今年度もたくさんの生きもの、より多くの人々との出会いに期待したい。

「古利根川の自然ふれあい観察会」の報告

小沢典夫

 《観察会は、5周年を迎えました》
 早いもので、も「古利根川の自然ふれあい観察会」が始まったのは1995年の4月。早いものでもう5年が経ちました。
 この観察会は、春日部の普通の市民に古利根川の様子を跳めてもらいたい、そして、身近な自然もなかなか素敵だということを実感してもらいたい、そんな思いから始まりました。毎月第3日曜日、午前9時半に藤塚橋に集まって、堤防沿いを歩きます。自然観察の合い間に行うゴミ捨いは最初の頃から続いており、川の水質検査も途中から加わりました。 
 お陰様で、年を追うごとに参加者の数が増え、多様な年齢階層・グループの人たちが常連に加わるようになったと思います。
 行政への働きかけも行っています。特に最近は、野田線鉄橋近くで春日部市の川久保公園整備と、これに対応する埼玉県の河川整備が進みつつあり、99年秋には両機関に対し、川沿いの自然をなるべく残すこと、公園内にはビオトープゾーンを確保することなどを要請しました。そして、河川整備については、今あるヨシ原を極力残すように、工事計画を変更してもらいました。これも多くの人が観察会に参加し、古利根川の自然を大切に思っていることが、行政当局にも認識された結果といえるでしょう。

 《99年夏の観事会は、こんなに色んなことがありました》
 4月18日 曇 20人 西岸を歩く。草丈が高くなり、カラシナが黄色い花を咲かせる。川久保公園予定地で、子どもたちが四つ葉のクローバを捜していた。
 5月16日 曇 10人 天気が悪く、参加者少ない。今日も西岸。オオヨシキリが鳴き、もう夏鳥の世界だ。
(6月雨のため中止)
 7月20日 晴 14人 西岸を歩く。鳥の姿少なく、カイツブリの親子を見た程度。
 8月15日 晴 10人 土手は草刈りしたばかり。体長2mのシマヘビ。川久保公園で虫取りする男の子あり、来月は「予ども虫とり大会」をにしようと計画。
 9月19日 曇 60人 年島小などエコクラブの子どもたち約40人が集まり、「虫とり大会」。カマキリ、ショウリョウバッタ、トノサマバッタ、クサキリなど。
 10月17日 曇 16人 モズの高鳴き、カラスウリの赤い実、と秋の気配。川久保公園の池が干上がり、ザリガニと無数のオタマジャクシの死骸があった。 
 11月21日 晴 40人 市の生涯学習の人たちが参加。上流の対岸コースを歩く。クルミやクヌギの実を捜す。カルガモに、コガモが混じる。
 12月19日 晴 15人 久しぶりに下流へ。カモ類多く、カワセミの森にカワウの群。
1月9日 晴 4人 県下一斉のカモ類調査に参加。古利根川橋〜橋上公園の間で、カワウ12羽、カモ類6種653羽を確認(カルガモ192、コガモ170、ヒドリガモ183、オカヨシガモ53、オナガガモ31、ハシビロガモ24)
1月16日 晴 16人今回も下流へ。カワセミの森で、じっと動かないアオサギと生殖羽のカワウの群。水辺でキタミソウを初確認、よく捜せば意外と多い。
 (2月雨のため中止)
3月19日 晴 32人 ガールスカウトの子たちが参加。暖かい。ヒメオドリコソウ、シロバナタンポポの花。カモ類もよく見えた。川久保公園に土砂が運ばれている。

6年目を迎える2000年度も、私たちの古利根川で”自然とのふれあい”の活動を続けていきます。どうそ、よろしくお願いします。(報告者小沢典夫)

虫とり大会☆春日部

子供たちに自然に触れてもらおうと、春日部市の古利根川で9月19日、「虫とり大会」(県生態系保護協会春日部文部主催)が行われ、市立牛鳥小の「子どもエコクラブ」の児童ら約60人が参加した。藤塚橋近くで古利根川の水質検査を行ったあと、上流を約1.5km先の川久保公園建設予定地まで歩き、昆虫採集や自然観察をした。子供たちは、虫捕り網を手に真剣な表情で、川岸や田んぼを飛び回るイナゴやショウリョウバッタ、コオロギなどを追った。6年生の増田竜君は「家で飼っているカナヘビのエサとして虫捕りをするが、今日は友達と一緒で楽しかった」と話していた。