2005年4月発行

支部長挨拶

                 

支部長 三好あき子

  古利根川の土手で行っている毎月第三日曜日の定例観察会は多くの参加者に支えられ、満十年という月日が過ぎました。
 春日部市の中心を流れるこの川は、その昔はたびたび氾濫を起こす暴れ川でした。しかしまた氾濫は上流の肥沃な土を運び、人々に豊かな作物をもたらしてきました。江戸時代にはもっぱら荷物の運搬を担い、春日部の宿場町を支えた川でもあります。
 今、大落古利根川(おおおとしふるとねがわ)はその名のとおり農業用水の用排水路として、夏は満々と水をたたえ、冬には浅瀬にカモたちの憩う、私たちの身近にある川です。藤塚橋付近の土手は自然護岸で、春、早々とオオイヌノフグリがその青い花を咲かせ、夏は水郷のような景色。秋、どんぐりが実るころには水深は浅くなり、冬、干潟のような川岸ではキタミソウの小さな小さな花を見ることができます。
 また、ウィングハット春日部総合体育館親水広場にできたビオトープでの活動も四年目に入ります。
 2002年春、コチドリの雛がかえりましたが、イタチが現れ、ここで巣立ちというわけにはいきませんでした。2003年にはバンが池で子育てをしました。2004年、すぐ隣のサッカー場の駐車場でコアジサシの1ペアが抱卵、近くに人が行かないように囲っていただいたのですが、場所がサッカーゴールの近くではやはり無理でした。
 今年も、虫や鳥や花たちが暮らす場所として谷原ビオトープを育てていきたいと考えています。
 のどかな景色の古利根川に、心温まる谷原ビオトープにお越しください。ささやかな活動も続ければ自然を守る力となります。私たちと一緒に自然を守る活動にご参加ください。



 

10年目の「古利根川の自然ふれあい観察会」

                                                

小沢 典夫

    「古利根川の自然ふれあい観察会」は、1995年4月に第1回目が開催されました。この観察会は、春日部の自然を代表する古利根川を多くの市民の皆さんに見てもらいたい、私たち自身としても足下の自然を見守っていきたいとの思いから始めたものです。自然観察と一緒に行うゴミ拾いは当初からの取り組みであり、途中から始めた水質検査も今ではすっかり定着しています。
  さて、この10年間、観察会を続けるなかで色々な出来事がありました。
  観察会が軌道に乗り始めた1999年に、野田線下流の川久保地区で河川工事が始まりました。そこで、河川管理をしている県の治水事務所へ話を聞きに行くと、この地区は春日部市による公園整備と連携して堤防を親水護岸化する計画があり、そのための工事だとわかりました。私たちが毎月ここで自然観察会をしていること、そこのアシ原ではカイツブリやオオヨシキリが繁殖していることを訴えると、事務所側は「計画の再検討」を約束してくれました。その結果、この付近の河川では、工事未着手だった堤防と中洲のアシ原が残されることになりました。また、春日部市役所でも、公園計画の中でビオトープ的な空間を造ることにしてくれました。これが川久保公園にできた野草観察池の由来です。
  2001年には、野田線から藤塚橋の区間で、市役所による土手の遊歩道整備計画が持ち上がりました。これも半年余りの話し合いの結果、歩道幅を縮小し、昔ながらの草の土手を残してもらうことができました。また、昨年秋には、藤塚橋下流の根郷地区で、昔の河川敷の水田(流作)跡に大量の土砂が持ち込まれました。春日部支部は、この地区に自然と歴史を保存した公園を整備するようかねて市役所に要請していた経緯があり、話し合いの結果、市側が土砂を他の場所に移動することを約束してくれました。
  さらに昨年度は、埼玉県による古利根川・中川の河川整備計画の策定作業が行われました。この計画は、今後の古利根川の河川環境に重要な意味があることから、当支部として生態系保護の観点から意見を提出したところです。   私たちが始めた小さな観察会も、参加者のご声援をいただきながら毎月こつこつ続けることで、古利根川の自然を少しは護ることができたのではないかと考えています。

流作

               

三好あき子

 流作---『りゅうさく』と読む。あまり聞きなれない言葉だが、古利根川周辺で使われた。
 古利根川は群馬の雨を集め流す川で、このあたりはたびたび洪水に見舞われた。しかし、洪水は毎年必ず起きるわけではない。河川敷の中に作物を作る。洪水が起きなければ収穫がある。洪水が起きてしまえば収穫はない。収穫できれば儲け物といった感覚だったのだろうか。流されても仕方ないと、あきらめの境地でつくっていたのか、どちらにせよ、少しでも多くのものを収穫したいと、時には流されてしまうのを覚悟で作物を植えつけた『流作』ということばがこの土地にあった。
 古利根川の藤塚橋下流、左岸側にこの『流作』の名残がある。市の土地で、公園予定地となっている。我々は2002年この場所の保存を要請、市も今後については私たちと意見交換しながら進めると回答していた。
 しかし、10月の観察会で藤塚橋下流に行くと流作跡の湿地に大量の土砂が入れられ半分以上が埋め立てられている。驚いて区画整理公園課に問い合わせると、他の場所での工事で出た土砂の捨て場に困り置いたとのこと。私たちは2002年の市の回答を確認、土砂の撤去を要請、市側も撤去を約束した。

隼無残、無念

               

三好あき子

 2005年1月7日、利根大堰付近で道路を渡ると、足元でばさばさっと羽音がします。驚いて見るとほんの1メートルほどのところに隼がいました。怪我をしているのか、羽を広げたまま飛べないでいます。しかし、さすがは猛禽類、私が動くとじっと目で追っています。
 私は今までに釣り糸が絡んで飛べなくなったドバトや、窓ガラスにぶつかり脳震盪を起こしたウソを助けたことはあっても、猛禽類を間近に見るのは初めてで、どうしてよいかわからず本部へ問い合わせました。さいたま市の動物病院を紹介いただき、鳥インフルエンザの検査の後、診察という段になって隼は息絶えていました。動物病院から研究のため山階鳥類研究所に送るとの申し出があり、お願いして帰ってきました。
 発見場所が道路脇だったので、死因は交通事故か何かと思っていましたが、その後病院でレントゲンを取った結果、散弾銃で撃たれたとわかったそうです。
 利根川のこのあたりで他にも隼やオオタカが撃たれたということがニュースで流れました。じっと私を見ていた隼の目を思い出すと、どうしてこんなことができるのだろうと、助けられなかったこととあわせ、無念に思うと同時に、全国的にも貴重で、守らなければならない鳥を無残に殺すなどということは決してあってはならないと考えます。
 人の楽しみのために動物の命を奪う狩猟を全国的に禁止にしてほしいと希うのは私の独りよがりでしょうか。(ナチュラルアイ2005年4月号より転載)

観察会に参加して

               

内田久仁子

 晴天に恵まれ、最高の散歩日和でした。今まではただの田舎道としか思っていなかった用水路沿いの田んぼ道が、どこか遠い観光地の風景のように思えてきて、本当にのどかなひと時を過ごしました。
 珍しいシナガワハギ、絶滅の危機にあるタコノアシ、憎き杉の花のつぼみ等々、先生が説明してくださると、それらがとたんに草むらの中でスポットライトを浴びたように見えてくるから不思議。顕微鏡を使い小さな花を観察したり、望遠鏡で対岸の木に群れる鳥を見たり、用水路を覗いて小魚の群れに歓喜したり、ずっと気になっていた鶯の鳴き声の秘密を解明してもらったり…。
 『いい旅、夢気分』なんて、どこかで聞いた言葉が頭をよぎっていました。
 [11月21日庄和町環境フェア・生活クラブ生協春日部支部・庄和町地区主催の自然観察会に参加した方の感想です。]

 過度文明依存症

               

柳澤一重

 へんてこりんな名前ですが、一種の現代病で、私の家にある病状です。
 温暖化が急速に進む地球で、先進国と称する国に住む私たちの日常生活はどう なっているのか、ちょっと考えてみましょう。エアコンをはじめとする電化製 品、乗用車、水道、都市ガス、携帯電話、挙げればきりのない文明の利器やサー ビスに取り囲まれている生活です。必要なときには何時でも、スウィッチ一つ、 ボタン一つで心地よい状態になり、心地よいサービスを得られます。これを当り 前と考えています。
 卑近な例で恥ずかしいことですが、私の家庭でいつも起きて いる諍いを紹介します。妻は居間に来ればすぐ「寒い」といってストーブをつけ ます。私は「寒いなら一枚余分に着てればいい」といってストーブを消すので す。また、居眠りしていて見てもいないテレビを消すと、妻は目を覚まして「何 で消すの。見ているのに。」というのです。要は居間に来たらテレビをつける、 ストーブをつける、というのが当り前で、「あるから点ける、あるから使う」と いうことになっているようです。「必要だから点ける、我慢できないから使う」 というのではないのです。「あなたは、文明病だよ。ちょっと昔の生活を思い出 してみろよ。文明の利器は必要もないときに使うものではないよ」と、偉そうな ことを言って叱るのですが、一向に改まらず、諍いはなくならないのです。こん な状態がどこのお宅にもあるとはいえませんが、私は妻の現状を表題の「過度文 明依存症」と名付けているのです。
 いま小学生のときから環境問題に関心を持たせよう、考えさせようという取り 組みがなされつつあるようです。私もこんな諍いを止めて、孫たちに祖母の病気 を治してもらわないといけないのかな、と考えたくもなります。
地球温暖化防止への京都議定書が発効しました。環境省は環境税の導入を蚊の泣 くような声で主張していますが、政府にも国会にも届きません。国のリーダーた らんとする人たちも「過度の文明依存症」かもしれませんから、国民にそれが届 くはずもありません。持続可能型の経済へ転換させようとする強い姿勢の見えな い日本の政治に歯がゆい思いを募らせています。

継続は力 生態系保護活動啓蒙を!

               

飯山健次郎

 本年も続けよう定例自然観察会を・・・  ますます自然保全の考え方が大切である社会になってきていることを感じている日々である。
 今年は環境をテーマにした「愛・地球博」開催の年で、マスコミで連日のように報道されている。また、いよいよ京都議定書が発効・実行される年、「温室効果ガス」排出削減めざし、世界中が動き出す年でもある。
 さて、私たちのライフワークも今までよりもう一歩前進させたい。一人ひとりができることは何かを考え、行動する一年でありたい。
 循環型社会の構築は机上論であっては意味がないのだ。異常気象、動植物への影響、食糧生産への影響、病災害の発生等、こんな事項は枚挙に暇がない。
 人間は今自然に感謝し、地球への思いやりを考えなくてはならない。私たち人間も地球上の住民である以上危機を迎えつつあるのは同様なのだ。
 自然大好きなかたがたの参加を募る。語り合おうよ、オンブズマンたち集合してください、理論は実行からです。

谷原親水広場

               

土田貴子

 ウイングハット・春日部(谷原総合体育館)の敷地内に親水広場が「ビオトー プ」として整備されてから、4度目の春を迎えました。
 「ビオトープ」とは[ビオ(Bio)生き物]と[トープ(Top)場所]を表すギ リシャ語を組み合わせた、ドイツで生まれた言葉です。日本でも、失われた生息 地を生き物たちに取り戻すための自然保護活動として導入され、徐々に各地に広 まりつつあります。
 谷原親水広場は、春日部にずっと昔からあった風景を再現し、違和感や特別な存 在感などなく、地域に溶け込み、なんとなくホッとするような、私たち人間に とっても優しく穏やかな空間です。
 自然はなるべく人間の手を加えてはならないと考えられがちですが、「ビオトー プ」は人間が創造した空間です。何もせずほったらかしのままでは、土砂が堆積 し、植物が生い茂り、ある一部の生き物だけしか棲むことのできない、多様性の ない自然になってしまいます。現存の生き物、新たに棲みつく生き物、逆に減っ ていく生き物等、継続して観察(モニタリング)した結果をふまえて、さまざま な生き物にとってより棲みやすい場所となるような維持管理を行うことが不可欠で す。そして、「ビオトープ」を管理することは、ただ生き物たちのためだけでは なく、私たちが自然生態系のしくみを理解し学習するための環境教育につながる のです。
 谷原親水広場は現在危機的状況にあります。毎月第2土曜の管理作業は、ボラン ティア不足で思うようにはかどりません。毎回ほとんどが植物の除去作業のみに 追われています。それでも植物の生育のスピードに追いつかず、このままでは、 水辺や砂礫地が消滅し、多様性が失われてしいます。
 現在までの4年間で(ウイングハット・春日部の警備員の方々のご好意で、貴重 なデータを得ることができています。この場を借りてお礼申し上げます)、野鳥 41種類、昆虫はトンボだけで10種類が確認されています。これらの生き物たち が、この広場を生息場所として棲み続けていけるよう、より多くのボランティア を募り、学校の環境教育の場としての活用を提言しつつ、担当である教育委員会 体育課とパートナーシップをとりながら、春日部市民に広く愛され、将来に受け 継がれていく自然となることを願って、活動を継続していかなければならないと 考えます。
 是非とも、会員の皆様の、管理作業ボランティアへのご参加を心よりお願い致し ます。

★平成16年度活動報告


☆定例古利根川自然ふれあい観察会 
毎月第3日曜日 10回(雨天により中止・2回)
☆谷原親水広場ビオトープ 自然観察&管理作業
毎月第2土曜日(1月・8月を除く)8回(雨天により中止・2回)
☆内牧公園 樹木の名札付け
奇数月の第2土曜日(1月を除く)4回(中止1回)
☆谷原親水広場 夏休み子ども虫取り大会(教育委員会後援)8月14日
☆中央公民館主催の観察会・講師
4月24日 春の野草観察(中央公民館〜八幡神社)
2月 5日 野鳥観察(公園橋付近)
☆市環境保全リーダー養成講座・講師
10月31日 春日部市の自然環境(室内)
11月 7日 野外観察・谷原親水広場
☆学校・環境学習・講師 3校・3回
5月14日 庄和町中野小5年 校庭の野草観察
5月26日 大場小3年 昆虫の話
6月28日 豊野小5年 野外自然観察(野草・野鳥・昆虫)
☆県下一斉ガンカモ調査参加
1月 8日 古利根川橋(4号バイパス)〜公園橋
☆古利根川一斉清掃参加
3月13日 藤塚橋下流右岸(カワセミの森のゴミひろい)
☆古利根・中川環境ネットワーク
4月11日 古隅田川ウオークアンドウオッチ
6月26日 交流会参加
3月 6日 中川ウオークアンドウオッチ
☆春日部市環境フェアー参加
11月23日 春日部の自然 パネル展示・活動紹介
☆春日部市遊学フェスティバル参加
11月27日・28日 春日部の自然 パネル展示・活動紹介
☆生活クラブ生協・庄和地区 自然観察会協力 2回
11月21日・3月25日 
☆雑学大学 自然観察会協力
3月29日 一ノ割駅〜古利根川〜藤の牛島駅
☆あゆみ幼稚園・散歩サークル 自然観察会協力 6回
☆支部役員研修
1月29日 猛禽類の観察・渡良瀬遊水池
☆支部報発行・年1回(4月)