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2008年4月発行

挨拶に代えて

                 

支部長 三好あき子

今年も古利根川の一斉清掃に参加した。古利根川は農業用の用排水路のため、四月から九月までは下流の堰を閉め水位を上げる。毎年三月、水位が上がる前に市民と業者(ごみ収集)、行政(春日部市)の三者がともにボランティアとしてごみを集めている。
 我が春日部支部は藤塚橋の下流、屋敷林があるところでの活動。ここは木が多いため野鳥が多く絶好の観察地点だが、木の根に引っかかっているごみが目立つ。これをどうにかしたいと数年前から参加している。
 現場に入るとゴミ、ゴミ、ゴミ。缶、瓶、ペットボトル、カップラーメンの容器、食品トレー、ビニール袋、等々。これらは水に浮かび、ここに流れ着いた物だ。
   * * *
  私たちが拾い集めたごみはゴミ袋に百くらいはあったろう。しかし、ここに引っかからなかったごみはそのまま海へと流れ、いつまでも漂っている。水に浮いた発泡スチロールを餌と間違え飲み込んだ亀は消化できず、排泄もならず、餓死したと聞く。
 私たちが今、使っている容器や包装資材は丈夫で腐りにくい。大変に便利な資材だが、それがごみになるととても困ったものになる。水に浸かっても溶解することはないし、そう簡単には土に返りはしない。
* * *
 便利さと引き換えに、私たちが他の生物にしていることは何なのだろう。同じ地球の上で暮らし、ともに生きる仲間に私たちがしている仕打ちは何なのだろう。もう一度、考えなくてはいけない時が来ている。




 

「古利根川の自然ふれあい観察会」から

                                                

小沢 典夫

007年度「古利根川の自然ふれあい観察会」の報告
                    小沢 典夫

 2007年度、古利根川では毎月第4日曜の定例観察会を10回、その他の水鳥調査などを含めると計13回の行事を行い、200人余りの皆様にご参加いただきました。
 以下は、毎回の観察会の記録です。一部の記録は三好さん、青柳さんに協力してもらいました。

 4月22日 曇 22人(内ジュニア1人)水質:COD10ppm,DO7ppm,透視度46cm
 水かさが増した川の堤防を上流方向へ。土手はカラスノエンドウ、スズメノエンドウ、キュウリグサ、ヘビイチゴ、オオジシバリ、オニタビラコなど春の草花がにぎやかで、参加者の歩みもゆっくりめ。冬鳥のシメやツグミに夏鳥のツバメ。川久保公園の池でタコノアシ、ナガボノシロワレモコウの芽生えを確認。

 5月27日 晴 18人(内ジュニア1人)水質:COD5ppm,DO6ppm,透視度46cm
 朝から晴れて暑い。土手はネズミムギやイヌムギが伸び、草花は先月より少ない。周辺自治会のゴミ拾いの日で、ゴミも少ない。鳥は川の水面にカイツブリ、上空を飛ぶゴイサギ、川久保公園の葦原にオオヨシキリ。公園前の川の中州付近でヒシとアサザを確認。

 6月24日 曇 17人(内ジュニア1人)水質:COD8ppm,DO5ppm,透視度52cm
 堤防は草刈りの後で草花が少ない。斜面にネジバナの花、ゆりのき橋の湿地でヒメガマとチゴザサの花穂。川久保公園の手前で久しぶりにシラコバト1羽。公園の水路ではハンゲショウが例年より少ない。公園池の葦原でオオヨシキリが鳴く。植生管理地でタコノアシ2群を確認、セイカタアワダチソウ等の抜取りをして解散。

 7月22日 曇  9人(内ジュニア0人)水質:COD7ppm,DO5ppm,透視度52cm
 右岸を上流へ。堤防はヤブガラシ、ヘクソカズラなどつるの植物が元気に伸びる。湿気があるせいかベニシジミやヤマトシジミがゆっくり見られる。緑中とわきの水路でハグロトンボ数頭。ゆりのき橋近くでブタナ、これは新手の外来種だ。川久保公園の池周辺ではナガボノシロワレモコウの花が咲き始め、タコノアシも元気だ。

 8月26日 晴  8人(内ジュニア0人)水質:COD10ppm,DO5ppm,透視度52cm
 晴れて朝から暑い。草の伸びた堤防を上流へ。ガガイモやキツネノマゴの花、緑中わきの水路でハグロトンボ8頭。ゆりのき橋から上流は、久しぶりに左岸を歩く。水中にミズオオバコの花、エビモと思われる水草、水辺にはゴキヅルが多い。昨年繁茂したミズヒマワリ(特定外来植物)は、河川事務所の除去対策のお陰か、ほとんど姿を見ない。野田線下の中洲の水辺でチョウトンボとショウジョウトンボ。

 9月23日 曇 15人(内ジュニア1人)水質:測定せず
 子どもの参加は少ないが、秋の虫取りをしながら上流方向へ歩く。ツマグロヒョウモンを始め蝶が多く、バッタの仲間もそれなりに。ゆりのき橋の湿地でヤナギタデ、ニオイタデ、チゴザサ、ミゾカクシなどを見る。川久保公園近くの川でヒシの花が咲いていた。

10月22日 晴 15人(内ジュニア2人)水質:COD20ppm,透視度15cm
 台風一過の快晴、川の水は濁る。土手は草刈り後で花が少ない。ゆりのき橋の湿地が宅地化されるのだろうか、埋め立てられていた。ショック。緑小わきのフジバカマを公園の植生管理地に移植。川にはヒドリガモが数羽、帰り道でカワセミ1羽。

11月25日 晴 12人(内ジュニア0人)水質:測定せず
 冬のコースの左岸へ。藤塚橋の上流の干潟ではコガモの群にハシビロガモが少し。下流のかわせみの森ではカワウ数羽とアオサギ1羽。行きと帰りにカワセミも観察。

12月23日 雨天中止

 1月12日 雨  6人(内ジュニア0人)水質:測定せず
 小雨模様だったが、県下一斉のガンカモ類調査に参加し、古利根川橋(赤沼)〜橋上公園(粕壁)間で水鳥のカウント調査を実施。確認できたカモ類はヒドリガモ147羽、カルガモ128羽、コガモ127羽、ハシビロガモ8羽、キンクロハジロ1羽の5種411羽で、前年(4種278羽)に比べて増加。他の水鳥はカワウ12羽、カイツブリ6羽、イカルチドリ18羽など。

 1月27日 晴 17人(内ジュニア0人)水質:COD10ppm,DO5ppm
 右岸上流へ。川の水面が凍っている。イカルチドリ、イソシギ、ハシビロガモなど。緑小のユリノキの種が落ちていた。川久保公園の前の湿地で冬越しのイチョウウキゴケ。公園近くのヒドリガモの群の中にアメリカヒドリが1羽、皆がわいた。

 2月2日 晴 45人(内ジュニア3人) 水質:測定せず
 中央公民館主催の野鳥観察会を公園橋付近で。風もなく穏やか。カモ類はヒドリガモ・コガモ・カルガモが少しずつ。他はモズ、イカルチドリ、オオバンなど。鳥の種類は多くないが、じっくり観察でき参加者も楽しんでくれたようだ。

 2月24日  強風のため中止

 3月 9日 晴 16人(内ジュニア0人)
 春日部市の呼びかけによる古利根川一斉清掃に参加。冬の観察会でいつも対岸から眺めている通称かわせみの森、その川岸に大量にたまったゴミを回収した。

 3月23日 晴 16人(内ジュニア1人)水質:COD5ppm,DO7ppm,透視度46cm
 藤塚橋を渡り左岸へ。土手にはホトケノザなど春の花々。上流の干潟にはコガモとヒドリガモの小群、コチドリが2つがい鳴き交わす。下流のかわせみの森でカワセミが2羽、美しい姿を堪能。カワウの止まり場に30匹超のカメ(ミシシッピアカミミガメ)。葦原でオオジュリンとアオジ。帰りがけにカワセミがもう一度。見どころの多い観察会だった。

春日部散歩

               

柳澤 一重

                               
2006年12月から毎月一回(原則第3木曜日)、「春日部散歩」と称し、生物調査しながら歩いている。今年度は11回歩き、カワセミが6回見られた。しかし、以前は市内でよく見かけたシラコバトは2回しか出現せず、いつの間にか珍しい鳥になってしまった。
一方、植物では絶滅危惧種に指定されているオオアブノメやヒメミソハギ、タコノアシなどを観察することができた。
・4月19日(豊春〜花積〜古隅田川:ムラサキケマン、ウワミズザクラ、キジ)
・5月24日(古隅田川〜下蛭田〜増戸:コイヌガラシ[NT]・イチョウウキゴケ[VU]、シジミ貝、ホウネンエビ、カブトエビ、タマカイエビ)
・6月26日(豊町〜岩槻長宮〜下大増新田〜ウィングハット:オオアブノメ[EN]、ミゾハコベ、キジ)
・7月19日(武里〜せんげん堀〜増田新田:巣立ちした燕の親子、ミソハギ、アピオス)
・9月20日(越谷の平方〜松伏緑の丘公園:ヒメミソハギ[NT]、ヒヨドリジョウゴ、シラコバト)
・10月18日(赤沼〜銚子口〜藤塚:エビスグサ、ツルフジバカマ、ワレモコウ、ツマグロヒョウモン)
・11月15日(豊野〜藤塚〜牛島:トネリコ、ツルマサキ、)
・11月28日(庄和総合公園:センニンソウ、タコノアシ[EN]、カワセミ)
・12月20日(豊野〜赤碕〜南桜井:タヒバリ、ホオアカ、タゲリ、アオツヅラフジ)
・1月22日(南桜井〜江戸川〜龍Q館〜正風館:アカハラ、オオタカ、シロハラ)
・2月27日(龍Q館〜庄和北公民館:オオジュリン、イヌエンジュ)
[EN:絶滅危惧TB、VU:絶滅危惧U、NT:準絶滅危惧]

春日部散歩に参加して

               

須田恵子(幸手市)

 春日部散歩ではいつも感心することがあります。それは地図のコピーを用意し、歩いたルートを朱書きしていること、樹木、野草、鳥、虫などを、区域を分け記録していること、リーダーの三好さんはもとより、他の会員たちも知識が豊富であることなどです。そのどれもが私にはない分野です。皆と一緒に歩くと説明から知識を得、おしゃべりから学び、とても楽しく勉強になります。この知識が私に蓄積されないのはなぜかしら?!
 自宅近くの倉松川で見たスズメのような鳥が「カワラヒワ」や「オオジュリン」、「ホオジロ」、「タヒバリ」と区別できるようになったのも春日部散歩の折に教えられたからです。鳥でも草でも名前を知っているのと知らないのでは楽しさが違います。
散歩で新鮮な空気を吸い、気分さわやか清々とし、健康によく、勉強になり、何より一人では味わえない楽しい充実した時間を過ごせます。帰途では少しの疲れも心地よく、次回もぜひ参加したいと強く思うのです。

光の森アリスとともに

三好あき子


時々私たちの活動に参加してくださるTさんから、ボランティアでかかわっている「光の森アリス」の人と自然観察会を企画したいのだが、と相談があった。「光の森アリス」は中途視覚障害者の団体ということで、全盲の方も、弱視の方もいるという。私たちに何ができるか、少々戸惑いもあったが、そういう方たちにも自然の中を歩く楽しさを知ってもらえたらうれしいと思い、協力することにした。
 本拠地が越谷駅近くであること、交通の便があること、食事の場所やトイレがあることなどを考慮して、越谷市のはずれにある県民健康福祉村を会場に選んだ。
 10月24日は大変よい天気で、光の森の方たちは職員・ボランティアも含め30人ほど、私たちも合わせると40人弱という大勢での散歩になった。県民健康福祉村は芝生の周りに木が植えられていて、大きな池もあり、池の周囲には薬になる木もあって、変化にとんだ広い公園。葉を触る、どんぐりを拾う、木の葉や花のにおいをかぐ等、体験をしてもらいながら植物などの説明をした。
 大勢のため、説明が皆に伝わらなかったり、触るという行為に時間がかかり、前のほうを歩く方と後ろを歩く方では大きく離れてしまったりと反省すべきことも多々あったが、おおむね散歩を楽しんでいただけたように思っている。
以下、感想をいただいたので紹介する。
・ 森林の空気を味わえてよかった
・ 説明がわかりやすかった
・ 花のにおいが新鮮だった
・ 公園が広い
・ 木の名前を教えてもらってうれしかった
・ どんぐりを持ち帰った
・ 鳥の鳴き声を聞けてよかった
・ 植物の生き方などよく調べたなあと思った
・ 前もって植物の名前を教えてほしかった
・ 10月の散策はよかった
・ グループに分かれて説明を聞きたかった
・ 話が聞けるときと聞けないときがあった
・ 空気がおいしかった

 

自然のイルミネーション

               

青柳 雅子

昨年も様々な出会いがあった。蛍もその一つだ。
 初めて出会うまで、蛍は私の中では伝説の生き物だった。毎年見る某ホテルの「ホタルの夕べ」のチラシを見て「ホタルはもうこういう場所でしか見られないのだろうか?」などと思い、行こうか行くまいか悩みながら蛍に会いたい気持ちを募らせていた。
 昨年夏、北本自然公園で念願の蛍に出会うことができた。暗闇の中を舞うたくさんの蛍のイルミネーションに、夢ではないかと目を疑い、ただただ感動し、しばしその舞に酔いしれた。都会のイルミネーションしか見たことがなかった私の目には、蛍がかもしだす自然の光は幻想的で格別なものに映った。春日部でも、私たちが保全活動をしているウィングハット春日部の親水広場のビオトープに蛍の光が瞬いた。これは市民に親しんでもらうために、近隣の蛍を育ててを放したもので、私もその1、2匹を見ることができた。ここで自生してくれるといいなと思うが、繁殖力の弱い蛍がここで生きていくのは大変なことのようだ。
新聞に「手に蛍を乗せてあげようとしたら子供は怖がり手を引っ込めた」という記事が載っていた。どうやら蛍の光を見て「熱いのでは?」と思ったらしい。なるほど、そういう風に思うのも無理はない。蛍が光を出す構造、これも不思議ですごいことなのだ。
自然は本当に偉大で奥行きが深い。そして、自然は私たちに「不思議」と「美」をプレゼントしてくれる。そんな自然を大切にしなければとしみじみ思う。
 今年も様々な出会いに心ときめかせ、プレゼントに感謝の気持ちをこめて、自然保護の活動を続けていこうと思う。

                

ごめんね、カモさんたち


                                  

土田ひかり(10歳)


 私は毎年、冬になると大池親水公園に行くのが楽しみでした。大池親水公園には、古利根川では見ることの出来ないキンクロハジロやユリカモメがたくさんやってくるし、コクチョウやサカツラガンを飼っているのでそれらを観察出来るのが嬉しいからです。小さい頃はよくパンやスナック菓子を持っていってカモたちにあげました。ユリカモメも寄ってきて面白かった事を今でも覚えています。
 でも、古利根川の観察会に参加するようになってからは、人間が餌を野生の生き物にあげることによって人間になれてしまうと野生で生きていくための力がにぶってしまったり、悪い人間につかまってしまったり、ふえすぎて自然のバランスが崩れてしまうなど、困ったことがたくさんおきてしまうことを知りました。私はカモにいい事をしてあげているつもりだったのでとてもショックでした。それからはカモに餌をあげたくても
あげるのをやめるようにしました。そのかわりにゴミを拾ったり、植物を保護したり、生き物たちのために私に出来ることはたくさんあります。
 先日久しぶりに大池親水公園に行ったら、家族で楽しそうに餌をあげている人がたくさんいました。小さい頃の私のようにカモたちが喜んでいると信じていることがよく分かりました。本当はカモや他の生き物たちが困っていることをみんなに分かってもらえたらいいなと思います。

事件は現場で起きていた(3)


輪島 正

その一 小学校で


春日部市の環境学習出前講座は2年目に入り自分も8校の出前講座に参加した。小学4年生に少しでも自然を感じてもらおうと、植物に触ってもらったり、絶滅危惧種の保護活動の話などをした。
出前講座のあと数日後に子供たちからお礼の手紙が届いた。クラス全員が書いたと思われるその手紙には出前講座で始めて分かった「ねこじゃらしが本当はエノコログサという名前である」ことや、「生物の中には絶滅しそうな種類もある」ことなどが、驚きの言葉とともに綴られていた。
担当したおじさんにとっては、確かな手応えを感じられる嬉しい手紙であった。更にその手紙には、「自分達も環境をテーマに取組んでいて、発表会をするので見に来てほしい」と書かれてあった。
是非行かねばなるまい。きっと自然環境の大切さに気が付いてくれたに違いない。身近な生物について調べてくれたグループもあるんだろうな。
発表会の当日、高鳴る胸を抑えつつ、学校に向った。最初の発表は水やゴミがテーマで、次のグループもリサイクルがテーマ。なかなか自然環境のテーマが出てこないと思い、発表待ちをしている一団に、生き物について取組んだグループがあるのか聞いてみたら、可愛い女の子の4人組がハーイと言って手をあげた。ウフフ、やったぜ、ついに待ちに待ったその時が来たな、どんな生き物に取組んでくれたんだろう、どんな発表が聞けるんだろうとワクワクしながら、見やすい場所に陣取ったのだが、次の瞬間言葉を失った。
黒板に張り出された模造紙には大きな字で、「恐竜はどうして絶滅したのか」と書かれていたのだった。「・・・・・」

その二 ジャコウアゲハ


一昨年の夏、龍Q館の近くで観察中に偶然ジャコウアゲハを見つけた。蝶が飛んでいる辺りの水路の土手に幼虫の食草ウマノスズクサが生えている。良く見ると卵があり、その近くでは幼虫も数匹確認出来た。
ジヤコウアゲハはアゲハチョウの1種で、埼玉県のレッドリストでは準絶滅危惧種に指定されている。
これは一大事、土手の草は時々刈られるから、保護に乗り出さなければ。案の定その年は3回ほど草刈が行われ、その度にジャコウアゲハの幼虫は命を落としたに違いなかった。それでもその年の冬にはすぐそばのエノキで数個の蛹が越冬し、初夏には無事に羽化して飛び立った。
翌年春、水路の管理事務所を訪問、土手の一部の草刈をしないよう申し入れ、ロープを張ってウマノスズクサの保護に乗り出した。夏の間自分達で草刈を行い、ジャコウアゲハの世代交代も順調に行われたようであった。
その後、支部の行事などで暫く足が遠のいていたが、十月初めに行ってみて驚いた。現場からウマノスズクサが姿を消している。この時期に幼虫が見つからなければ、越冬する蛹はゼロかも知れないと心配になった。
冬に再訪すると、幸いにも数個の蛹が越冬中で、近くの電柱にまで蛹を発見、ひとまず胸をなでおろした。

         

 

オナガ

        

佐藤 英行

 庭を眺めながら、いつも来る鳥が最近姿を見せないな とこのところ思っていたところ
 久しぶりにその姿を見せてくれた。オナガ(尾長)が数メートル先の枝に飛んできた。尾が長いオナガは、灰色に少し緑がまじった姿で、あまり派手さはない。ただ鳥にしては大きいタイプで、他に比べ目立つ。塀に留まっていたところ、そこがちょうど猫の通り道になっていて、それを見るや飛び立って行ってしまった。
 他の鳥がどうかというと、雀が来る場合があるが、目だって多いのがこのオナガだ。我が家の近所で、いつもオナガを見ることがあるのかと言えばそうでもない。越谷のせんげん台駅近くに沢山の群れをなして電線に止まっているのを見かける。場所によっては多く見られる鳥と、そうでないのがある。種類によって住家は人間と同じように様々だ。


 数ヶ月前、春日部散歩で歩いた旧庄和町の田圃道にタゲリがいた。双眼鏡で見たタゲリは煌きと鮮やかさがに焼きついた。冠というのか軍旗ならぬ羽を靡かせ気品がある。初めてお目にかかれた。ここはタゲリのテリトリーだ。
 また毎朝の散歩道にアオサギが川べりの塀につくねんと立っているのに時々出会える。やはりこの自分の猟場であることもあるが、縄張りでもあるのだろう。


 我が家の庭に冬、センリョウ、マンリョウ、柊、南天が夫々赤く、小さな実をつける。家人はクリスマスやお正月にリースや生け花として飾るのに、親戚や近所に配るようにしているようだ。ところが、いつのまにかセンリョウの実がすっかりなくなっているのに気づき、家人は憤慨していた。
 ある時、他所の家の垣根の側を歩いている時、鳥が赤い実を啄ばんでいる現場に遭遇した。なるほどそうなのかもしれないと納得したのだ。容疑者はオナガかもしれない。ただ現行犯として発見できないままだ。しかし何を思ってか我が家の庭先に時々姿を現す。かならずしもこれらの実を狙ってくるとは思えない。冬場にだけオナガが来るとは限らないのだ。かといって、逃げ足の速いオナガは家人の敵ではない。
 餌付けとかの特別な歓迎をしないのに何を気に入ってくるのか。我が懐に入ってくるものを例え憎い相手でもこれを討つことはしない。むしろ穏やかに受け入れてくれそうな我が家を見込んでくれたことが嬉しい。

 

 

スズメを通して思うこと

内田 清貴(上尾市)

 

 スズメは珍しい鳥ではない。電線に止まっている一羽のスズメを見かけたとしても、それをフィールドスコープや双眼鏡でじっと見つめる人は多くはないだろう。
 でも、私はスズメを見ていても飽きないタイプだ。町中や郊外でスズメに出会うと、何をしているのだろうと時間の許す限りは観察したくなる。以前、公園で花壇を眺めていたら、小さな窪みが幾つもあった。何だろうと考えていたら、数羽のスズメがやって来てそこで砂浴びを始めた。図鑑でしか見たことのない砂浴びを実際に見るのは興味深かった。しかし、観察という視点に立たなくても、水浴びしている姿や、冬の寒い朝に丸くふくら雀になっている姿など見ると、何となくにっこりしてしまう。
 スズメについて調べると色々なことが分かってくる。こんな話がある。1956年頃、中国では米を食べるスズメの駆除を始めた。しかし、その結果、雑草と害虫が大発生してしまったという。つまり、スズメは米を食べるが、雑草の種子や害虫も食べていたということだ。彼らは、雑草と害虫の発生を抑止する働きもしているのだ。
また、こんな情報もある。標識調査によって新潟で離したスズメが遠く岐阜や岡山で確認されたという。スズメは渡り鳥と違って一年中いるので、私は、彼らは生まれた地域かその近辺に住むものと思っていた。しかし、「スズメの成鳥は移動しないが、若鳥は移動・分散する傾向がある」のだという。旅ガラスならぬ旅スズメがいるのだ。
給餌については、こんな記述がある。「親スズメは一日に300回も虫を運ぶ」と。「巣立ちまで14日かかったとすれば、計算上、300回×14日=4200回」。これだけの虫を取るということは驚きだ。これは、先に挙げた中国のスズメの話ともつながる。「害虫の発生の抑止」ということになるだろう。
スズメの寿命はどれくらいなのか。「標識調査では、8年」。「平均寿命は1年とちょっと」。
 普段、見慣れているスズメ。でも、少し調べてみただけでも、知らなかったことがこれだけ出てきた。周囲に目を凝らせば、今まで気付かなかった世界が広がっているのが分かる。そうした世界について、時に驚き、時に納得しながら、様々なことを理解してゆきたいと思う。

<引用・参考文献>
○1国松俊英(著)「鳥のことわざウォッチング」河出文庫 1999年
○2日本野鳥の会レンジャー(著)「あなたもバードウォッチング案内人」(財)日本野鳥の会 1995年
○3安西英明(著)「スズメの少子化、カラスのいじめ」ソフトバンク新書 2006年
○4埼玉新聞

日本人と桜


松本順吉


  サイタ サイタ サクラガ サイタ
 終戦までの一年生の国語の教材はこの詩で始まっていた。桜好きの日本人が待ち焦がれた開花の感動である。
 私が小学生のころは桜が満開になるのは入学式のころであった。近年は卒業式に咲くことも多いが、桜は学校と絆が強い。
  敷島の 大和心を ひととえば 朝日に匂う 山桜花
 国学者・本居宣長の詩で、小学校最後の結びに用いられた。入学と卒業を桜の詩でまとめたので「サクラ読本」と言われた。
この二つの詩は日本人の精神や生きざまに影響を与えた。
一度に咲き、潔く散る美しさは「同期の桜」などとたたえられ、太平洋戦争の敗戦が決定的になったのに「敷島隊」や「朝日隊」など次々と特攻隊が組織され、飛行機もろとも体当たりの自殺攻撃を行い、多くの若者が散った。
この悲劇は「サクラ読本」にも起因しているのではあるまいか。
あれから60年、靖国神社の桜は今年も満開、多くの人を集めている。


我が家の近くの一ノ割公園の桜が見事に育ち、市では花の季節には仮説トイレを設けるなど、市民サービスをしている。
4月6日、日曜日、晴天、たこ焼きやが出るほどの賑わい。花見の宴の後はごみの山、真新しいブルーシートもごみとともに投げ出され、火気厳禁の公園の芝生には消し炭、桜の枝がへし折られていた。
 敷島の 大和心を ひととえば 泣いた 泣いた サクラが泣いた

ツミ(鷹の仲間)が庭に来た。

柳澤 一重


   

 正月の5日、朝食を済ませて居間の椅子に腰掛け、庭に目をやる。「鷹がいる!」一瞬目を疑った。まさかの出来事である。しばらく身動きできず、家族を呼ぶのもためらっていた。何か獲物の肉を食いちぎっているので、カメラを取り出し撮影したのがこの写真。2時間以上この格好で食事をしていた。 近頃春日部八幡神社の森で毎年子育てをしているようだが、本来は夏の渡り鳥のようだ。ツミもこの辺りで冬を快適に過ごせるようになっているのだろうか。
   昨年の夏、関西地方でクマゼミが産卵するとかで光ケーブルが傷つけられ、通信障害が発生しているという報道があった。また蝉時雨の音は交差点の騒音より大きいとか。本来もっと南にしか棲息できなかったクマゼミが関東地方にも現れて暑苦しい日々が近づきつつあるのを危惧する。 また春日部散歩(当支部の活動の一部)という観察会を行っているが、ここ数年ツマグロヒョウモンという蝶が非常に目立つようになっている。1955年ごろの図鑑によると、この蝶は北緯30度ぐらいまでしか分布しないと解説されている。
 もう一つ挙げればシラコバト。このところめっきり数を減らしているようだ。春日部に来ればシラコバトが見られるといわれていたのに、最近の観察会でも見かけることがほとんどない状態だ。気候のせいばかりではないだろうが、気にかかる。 あれこれ挙げたらきりがないが、極地の氷山ばかりでなく、気候の変化が私たちの目に見えてきている。 一昨年から市の環境保全課の出前講座として小学4年生の総合学習の支援を当支部でもしてきたが、環境の著しい変化(とりわけ温暖化)を虫や鳥や植物を通して子どもたちに教えていくことは大変意義のあることと思う。純粋な子どもたちの声で大人の意識を変えていくこともできるのではないだろうか、とも考えている。  

            

★平成19年度活動報告★


今年度も定例的に実施している観察会を中心に春日部の自然環境の調査、勉強を続けてきた。
また昨年度から市の環境保全課が行う市内の小学校児童むけの出前講座は、これからの環境問題への取組みとして大変有意義な活動の一つとなると思い、講師を派遣してきた。純真な子どもたちから大人へ自然の大切さを訴えていくことで、大人の意識を変え、生活を変えていくことにつながればと考えている。

☆古利根川自然ふれあい観察会
  毎月第4日曜日9時30分から約2時間 10回
  8月にはミズオオバコ(絶滅危惧種)を確認
☆ 谷原親水広場ビオトープ自然観察・管理作業
  毎月第2土曜日9時から約2時間 10回
☆ 谷原親水広場 夏休み子ども虫取り大会
  8月11日
☆ 中央公民館主催の観察会・講師
  4月21日 春の野草(春日部八幡神社近辺)
  2月2日 冬の野鳥(古利根公園橋近辺)
☆ 市の環境保全リーダー養成講座・講師
  10月21日(室内)
  11月18日(野外)
☆ 市の環境出前講座・講師
  市内小学校の4年生対象(原則)
  豊春、小渕、内牧、立野、上沖、中野、川辺、
  南桜井、幸松、桜川、富多、宝珠花
☆ 市環境審議会
  3回出席
☆ 南桜井小 寺子屋 自然観察会・協力
  6月、10月
☆ 総合学習授業・講師
  5月15日 武里西小 昆虫の話
☆ 樹木の名札付けと樹木の説明書作成
  桜川小学校の樹林(樹木の説明書の提供)
  一ノ割公園の樹木
☆ 3Days 協力(中学1年生の職場体験学習)
  11月谷原親水広場の砂礫地の草取り
  (コチドリの営巣場所)
☆ 春日部市環境フェア 参加
  11月23日 大沼市民体育館 
  パネル展示(春日部の自然と支部活動の紹介)
☆ 古利根川一斉清掃 参加
  3月9日(藤塚橋南の屋敷林縁)
☆ 光の森 観察会・協力
 10月24日 県民健康福祉村を散歩
☆ 県下一斉ガンカモ調査
 1月12日 古利根川橋から公園橋まで
☆ 古利根・中川ネットワーク
 9月26日 倉松川を歩く
☆ みどりのトラスト地候補地・応募
  県の募集に対し小渕の古利根河岸砂丘を
  推薦応募したが、落選。
☆ 中川流域自然観察会
 (財)埼玉県生態系保護協会本部主催
 12月6,7日 参加
☆ 春日部散歩
 原則第3木曜日 市内の生き物調査 11回
☆ 植生保護
 ウマノスズクサ(ジャコウアゲハ生息地)
  中川(永沼)、西金野井
 ナガボノシロワレモコウ
  八丁目、不動院野
 ノカラマツ、ワレモコウなど
  内牧
☆ 役員研修
 8月 3日 北本自然観察公園(蛍)
 12月16日 小石川植物園(木)
 3月27日 北本自然観察公園(桜)
☆ 環境教育アシスタントへ登録
  県の募集に応募、2人新規登録(計4人)
☆ 支部報発行
  4月(年1回)