2004年4月発行

支部長挨拶

                 

支部長 三好あき子

  子供の頃、特に自然が好きだったという記憶はない。というより、私たちの子供の頃は子供は外で遊ぶもので、草で遊んだりするのは当たり前のことだった。高校で自然愛好会という張り紙をした部室にフラフラと入っていったのが鳥を見るようになったきっかけだ。  
 しかし、大人になっても子育て最中は、夏休みなどまとまった休みにどこかへ出かけて楽しむのが自然だったような気がする。毎日の暮らしの中では当たり前に見ていて、だからといって特にどうとは思わなかった。
 それが、支部活動に参加してから、身近にある小さな自然に目が向くようになった。
 春日部の中に元々あったもの、まだかすかに残っている自然、消えゆく自然。毎日散歩をしながら足元を見ると小さな花。耳を澄ませば鳥の声や羽音。梢の花。かすかな風に舞う綿毛を持った種。葉の陰に隠れた虫たち。
 この私たちの身近にある自然を大切にする心を人々へ伝えたい。


 

2003年度「古利根川の自然ふれあい観察会」の報告

               

小沢典夫

 「古利根川の自然ふれあい観察会」を始めた1995年から、丸9年が経ちました。
 この1年間では、毎月第3日曜日の定例観察会のほか、「古利根川を全部歩く会」など関連行事を含め合計14回の観察会を行い、210人余の参加者がありました。
 この1年間をふり返ると、まず、夏の観察コースである藤塚橋と野田線の中間に「藤塚新道」の橋が完成しつつあります。地元の要望や期待は理解できないわけでもありませんが、やや複雑な思いで見ています。1月の水鳥カウント調査では、確認したカモ類が4種271羽で、前年(7種、502羽)に比べ種類も個体数も大きく減少していました。このことも気がかりです。
 一方、明るい話題では、川久保公園で、春日部市の了解のもとに植生管理の作業を行うことになり、藤塚新道近くの工事予定地にあったミゾカクシの移植などをしました。
 また、流域の自然保護団体が協力して「古利根川を全部歩く会」を始めました。その第3回目として、昨年10月、春日部の公園橋から赤沼までを歩きました。  
2004年度も、古利根川で“自然とのふれあい”の活動を続けていきます。どうぞ、よろしくお願いします。

古利根・中川環境ネットワーク

               

三好あき子

  私たちが毎月観察会を開いている古利根川は農業用水として利用されているため、夏と冬では水位が大きく違う川だ。夏、古利根川は満々と水を湛え、葦が茂り、オオヨシキリが歌う。冬、水が引いた川には鴨などの水鳥がたくさんやってくる。
 この古利根川の始まりを、2002年4月、久喜支部の観察会で案内していただいた。そののどかな景色は私たちが毎月観察している川と同じで、この川をもっとよく知りたいと思った。
 久喜支部長・藤田さんが流域の環境に感心のある団体に声を掛け、6団体の共催で『古利根川を全部歩く』という催しを開催することができた。
 2003年4月6日、第1回(2003.4.6) 久喜市内の古利根川の始まり(葛西用水と青毛掘川の合流点)から東武動物公園まで桜の花を見ながら50人で歩いたのを皮切りに、
6月8日 第2回 東武動物公園から春日部駅近くの古利根公園橋まで、梅雨に入る前の好天気の中を65人で、
10月5日 第3回 古利根公園橋から古利根橋まで、秋の草の生い茂った中を68人が歩き、
2004年2月22日 第4回 古利根橋から中川との合流点までを冬の鴨を観察しながら60人
と、毎回50人以上の方の参加があった。
 古利根川が昔、田んぼに水を引くために使われていたポンプを見たり、イチョウウキゴケやキタミソウなど絶滅が心配されている生物を観察したり、古利根川が形成した河畔砂丘を歩いたりと、現在の古利根川の様子を多くの方と共に見て歩けたこと自体が、大きな成果だ。
 2004年4月11日、この会の第5回として、『古隅田川を歩き、利根川の歴史を聴く会』を開催した。  古隅田川は岩槻市と春日部市の境で二本の排水溝が合流、一級河川古隅田川と名を変え、家庭排水と雨水を集め、田圃の落とし水で薄まり、工場廃水も加わって新町橋の上流で古利根川に注ぐ。春の川の土手は菜の花が咲きとても美しく、水の状態とのギャップを強く感じた。  午後の講演会では、利根川を愛してやまない金井忠夫先生から古利根の歴史と変遷、平地での川のありようなど、興味深い話を聞くことができた。
 その後、この行事を共催した埼玉東部の9団体が相互の協力を深めていくため、「古利根・中川 環境ネットワーク」を立ち上げた。

参加団体
埼玉県生態系保護協会 久喜支部・杉戸町有志・春日部支部・南埼葛支部
宮代水と緑のネットワーク すぎとエコグリーン
松伏自然倶楽部 松伏の川をきれいにする会
埼玉東武地区観察会(STN)

「春日部の自然」

               

並木 章

   毎月、(財)埼玉県生態系保護協会春日部支部が主催する「古利根ふれあい自然観察会」に参加しています。
 初めてのとき、何か野草の本がないかと探したところ、息子の本棚に「春日部の自然」というのがありました。「ちょっと借りるよ。」と言ってからもう2年が過ぎてしまいました。 なんてたって、「春日部の自然」を観察するのにこれ以上のものはありません。 ちなみに、この本は、春日部市教育委員会が平成4年に発行したものです。 平成元年から3年がかりで市内の小中学校の先生たちが調査や撮影をし、集めた資料から編纂されたものだそうです。 春日部の春夏秋冬の草花そして鳥のなかまが掲載されています。
 10年たった現在、そこに載っていたものが見られなくなったら大変です。 ひょっとしたら外来種のものが増えているかもしれません。 近頃は、自然の中で野生のものとそうでないものとが交配し、野生のものと異なる特徴をもつ野草もみられるそうです。
私など、いまだに「ガマ」「コガマ」「ヒメガマ」のちがいもよくわからないレベルですが。 ガマのなかまは古利根川沿いにも生えています。 冬になるとガマの穂のところが白くなり、綿のようなものが風に乗り飛んでいきます。 先ほどの「春日部の自然」によれば、茎の先にソーセージそっくりの穂がつき、太いところは雌花、その上の細い部分は雄花で、昔、この花粉を傷薬にし たそうです。
 ちょっと横道にそれますが、あの、傷ついた「いなばのしろうさぎ」は大黒様にどのようにすると良いと言われたのでしょうか?インターネットで調べると
@「熟したガマの穂をしいて、その上にくるまる」
A「ガマの花を摘んできて、その上に寝転ぶ」
B「がまの花粉の上にねころぶ」
C「ガマのほわたにくるまる」
といろいろ出てきます。 ガマの花粉で傷が治ったとすると、いなばのしろうさぎは花粉ができる夏ごろひどい目にあうと同時に運良く夏で助かったことになるのでしょうか。 また、大黒様の兄弟たちが因幡の国にいる八上比売(やかみひめ)という美しい姫にみんなで会いに行ったのもその季節ではないかと想像されます。
 ガマひとつで神代まで思いをめぐらすなんて「古利根ふれあい自然観察会」のおかげです。
 これからも「春日部の自然」を片手に科学だけでなく野草にまつわる歴史なども学んでいきたいと思います。

 田んぼと古利根を新しい春日部の宝に

               

柳澤一重

 山国の農家に育った私が昭和51年(1976年)の春日部に来た時の印象、それは「関東平野の真ん中で豊かな農業ができる土地だなあ」というものでした。しかし、典型的な埼玉都民の私は、農地が見る見るうちに宅地となっていく時代の流れに身を任せて生きてきてしまいました。この間に、この地域に残された自然はもう川しかない、という人もいるほどに変貌してしまいました。
  地球が生まれて46億年、偶然発生し進化してきた生き物には、地球という星にみごとな均整の取れたシステムを作り上げてきました。しかし今、このシステムは爆発的に増殖する人間と人間の果てしない欲望によって破壊される危機に直面しています。世界では環境宣言を発し、国は環境省をつくり、市も環境基本計画や緑の基本計画をつくりました。また、今年10月「環境保全活動・環境教育推進法」が施行されて、推進策づくりや指導者の育成に取り組むそうです。
  しかし、人々の意識の変わる前に、田んぼも林も山も川もどんどんその姿を消していきます。そのよい例が春日部市の体育館ウィングハットの建設です。建設が始まるや、周辺の何ヘクタールもの田んぼが次々と消えました。こんな風に田んぼや林は簡単につぶされていきます。「環境保全を、緑の保全を」、と訴えている行政の施策がこの始末です。こうした動きを食い止めるには、先ず、「今あるものを消さない、変えない」ことから始めなければならないのではないでしょうか。
  現在の田んぼは確かに昔のように蛙もドジョウもトンボも蛍もいない田んぼです。しかし、それを言っていは現代の農業のやり方を否定することになります。先ずは現状で残すことが大事です。大きな川とその周辺を残すだけではあまり意味がないのです。平野を流れる川は田んぼや畑があってはじめて生きた川になるのです。田んぼがあるから小さな流れも必要になり、小さな流れが小魚やトンボや蛍をよみがえらせることになるのです。川は単なる放水路ではないのです。放水路と考えるとすぐ暗渠化してしまえ、という人が出てくるのです。生産活動を支える、生産と密接に結びついた水の流れであるべきなのです。農地を残さなければ自然も生態系も残すことはできないのではないでしょうか。
  来年、春日部市は周辺3町と合併します。3町はまだ多くの農地を残しています。新しい市は新しい環境基本計画や緑の基本改革を作ることになるでしょう。そこでは先ず、豊に残っている農耕地とそれを支える河川をしっかり守ることを第一に盛り込み、農家や農業関係者等と真剣に議論していかなければならないと思います。道路をつくり、人口を増やし、工場を増やさなければ豊かになれないという20世紀型思考しかできないリーダーは即刻引退してもらわなければなりません。豊かな田んぼと古利根川や江戸川に流れ込むたくさんの川が新しい春日部の宝であり続けるようにしなければなりません。

「自然環境保全」社会の意識を変えていくための啓蒙活動について

               

飯山健次郎


 「自然との共栄」が地球上の最大の課題になっている。地球がある限り、人間が住 んでいく限り、永久的に続くテーマである。20世紀の物質文明から21世紀の精神 文明への変化が各分野で見られてきている。私たちの周辺も変化していることを感じ ている。法律や制度が新しく変化導入され、私たちがライフスタイルを変えざるを得 ないことを知らされ始めている。ゴミの発生を抑制する運動、ゴミの持ち帰り運動、 リサイクル運動等も進んだ方向にある。リサイクルショップの利用も良い例であると 実感している。循環型社会がすべての分野へと導入されていくことを望みたい。私が 生態系の保護に関心を持つようになったきっかけはゴミ問題だが、すべての生きも の、大気、水、土へと関心を広げ、今後も勉強していきたい。
 当支部、毎月定例の「古利根川の自然ふれあい観察会」に参加してくれる皆さんか ら、自然環境問題の重要性について生の声を聞くことができる。私たち春日部支部の 活動、埼玉県生態系保護協会の活動の重要性はますます増していくことになる。観察 会に子ども達が参加してくれることは、自然への理解を深め、自然環境に関心を持っ てくれることにつながると信じたい。また、観察会を通しての子ども達とのふれあい は大人が再教育される場面に出会うことだと思う。「自然とは」・・・・・もう一度 考えさせられた。「生態系保護」の意識に変えていく啓蒙活動の難しさもわかってき た。
 観察会を続けながら話し合おう、考えよう、実行しよう。なかまを募る。自然大好き人間の皆様、参加してください。遠くまで出かけないと自然は楽しめないよと思い込んでいる人へ・・・気持ち一つでどこでも自然は楽しめます。毎月第三日曜日、「古利根川の自然ふれあい観察会」への参加をお待ちしています


古利根川を全部歩いてみよう

               

土田貴子


 古利根川の豊な恵みによって育まれた自然を、かけがえのない財産として保全し、次の世代に引き継いでいこうと活動している団体および有志の方達が(下記参照)、自然観察を楽しみながら、まちづくりと自然環境の両立を広域的な観点から一緒に考えていこうと、古利根を全部広域自然公園にしてしまおう!をキヤッチフレーズに、「古利根川を全部あるいてみよう会」(仮称)を発足させました。
 当支部では、毎月第3日曜日の「古利根川自然ふれあい観察会」を主に、春日部流域の自然を守っていくための活動を続けていますが、併せて、この会の趣旨に賛同し、共に活動を広げ、展開していこうと考えています。
 葛西用水の流れは、久喜市と杉戸町の境で大落古利根川となって、宮代町、春日部市、松伏町、越谷市と流れ下り、古利根堰で中川につながります。(全長26,7km)
 4月6日(日)に行われた第1回の古利根川歩きでは、久喜駅に集合後、古利根川の起点(葛西橋)から川の流れをたどって、東武動物公園駅近くの古川橋までを歩きました。要所要所で、地形、歴史、昔の様子など興味深い説明をしていただきながら、川の様子、周辺の環境、春の野草を主に観察しました。

参加団体(上流より)
久喜市  (財)埼玉県生態系保護協会 久喜支部
杉戸町  (財)埼玉県生態系保護協会  会員有志
宮代町     宮代水と緑のネットワーク
春日部市 (財)埼玉県生態系保護協会  春日部支部
松伏町     松伏自然倶楽部(予定)
越谷市     埼玉県東部自然観察会



谷原親水広場

               

土田貴子


 昨年4月、春日部市谷原に、スポーツ・レクリエーションの振興拠点施設として建設された総合体育館「ウイング・ハット春日部」がオープンして、丸1年を迎えました。利用者も増え、春日部市のシンボルの一つとして注目を集めています。  その体育館に隣接する谷原親水広場(雨水調整池)をご存知でしょうか。この広場は、当支部の提案が一部採用され、昔からの春日部の植物や野鳥、昆虫などのことを考慮した整備がなされています。市民が憩える場所としてだけではなく、ビオトープ(地域の野生の生き物がくらす場所)としても計画され、施工されたこのような事業は、春日部市では初めてのことです。
 夏には早速、砂礫地のある草地「ヒバリの草原」でコチドリの抱卵を確認(残念ながら孵化まで至らず)。南の池では市によって植栽されたアサザが増殖し可憐な黄色い花を咲かせ、その上をチョウトンボの舞う姿が確認されました。また秋には、トノサマバッタが多数出現。バッタを追う子ども達の微笑ましい姿も見受けられました。12月には100羽ものカモ(カルガモ、コガモ、オナガガモ、マガモ)が数日間にわたり水辺を訪れました。国鳥であるキジ、天然記念物にも指定されている埼玉県の鳥シラコバトもこの広場が気に入ったようです。1年間で25種類もの野鳥を観察することができました。植物や昆虫などが多様であることが窺えます。
 しかし、整備中に法面保護のため吹き付けられた、外来種であるウシノケグサの大量繁茂による在来の植物への悪影響、土壌に含まれている鉄分の流出や、アオミドロの繁殖による水辺の景観および水質の悪化など、さまざまな問題が発生しています。なにより懸念されるのは、この広場の維持管理です。財政上、十分な管理予算を組むことが困難な現状をふまえ、当支部では、担当である市教育委員会体育課とパートナーシップを取りながら、市側の管理を補完する形で、年間を通しての観察記録、外来植物の除去作業、手作業が必要な部分の草刈、水辺のクリーン作業,自生植物の名札つけ、新たな植栽や移植作業等を行っていきたいと考えています。また、5月11日には教育委員会の後援のもと、多くの市民のみなさんにこの広場を知っていただくため、観察会を開催いたします。お誘い合わせの上、ふるってご参加ください。 。


いのち

大竹仁

白鳩の 幻影舞うは 花辛夷
春の暮 抜き差し忍ぶ 鷺の足
初蝶の 生命の重さ 知りにけり
蛙出で 濁世に鳴くは あわれなり
亀鳴くや 鳴かざるものも 鳴く現世

★平成14年度活動報告


☆定例古利根川自然ふれあい観察会
 毎月第3日曜日 11回(雨天により中止・1回)
☆中央公民館主催の観察会・講師
 4月13日  春の野草観察(中央公民館〜八幡神社)
 2月8日  野鳥観察(公園橋付近)
☆県下一斉ガンカモ調査参加
 1月12日  古利根川橋(4号バイパス)〜公園橋
☆学校教育2校・2回
 7月12日  大場小3年 昆虫
 10月3日  緑小5年  古利根川の自然(総合学習)
☆ボーイスカウト協力
 3月22日  毒草、薬草、食べられる野草の観察、他
☆市環境保全リーダー養成講座・講師
 10月27日  春日部市の自然環境(室内)
 11月10日  野外観察
☆古利根川一斉清掃参加
 3月23日  藤塚橋下流右岸(カワセミの森のゴミひろい)
☆本部イベント協力・古隅田川を歩く
 9月23日  下見の案内
 9月28日  当日参加
☆支部役員研修
 6月1日 〜2日  野鳥観察・古峰ヶ原
 1月25日  猛禽類の観察・渡良瀬遊水池